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ブログ: シングル・ペア・イーサネット – 展開と特性

パート2:さまざまな業界における移行パス

IPベースのネットワークをセンサレベルにまで拡張するというアイデアは確かに有益ですが、問題は、どのようにSPEを目的のデバイスや装置に展開できるかということです。現在の設置ベースを見ると、さまざまなフィールドバス(下表参照)とセンサネットワークがフィールドに存在しています。

フィールドバス伝送速度最大距離
ファクトリー・オートメーション
AS-Interface125kbit100m
Interbus500kBd .. 2Mbit最大400m
Profibus DP9.6kBd ..12MBit100m .. 1200m
CANopen625kBd ...1Mbit30m .. 1000m
DeviceNet125kBd .. 500kBd100 .. 500m
CompoNet最大4Mbit1500m(@93kBd)
CC-Link最大10Mbd100m
IO-Link250kBd20m
プロセス・オートメーション
Profibus PA31.25kBd1900m
HART1.2kBd1500 .. 3000m
(ケーブルに依存)

センサーと周辺機器における現在のフィールドバス技術の距離および伝送速度

 

この表は、プロセス・オートメーションとファクトリー・オートメーションで運用されているフィールドバスの混在を示しています。そのため、今日展開されている速度や距離の要件はさまざまです。これらの要件は、次のテクノロジーがサポートする必要のある仕様を定義します。さらに、プロセス・オートメーションには、本質安全のための特定の要件がある防爆領域があります。ブラウンフィールド装置における実際の上位層ネットワークへの接続には、次のようないくつかのデメリットがあります。

  • 「古い」装置と新しいイーサネット・ネットワーク間にゲートウェイが必要
  • 場合によっては診断およびパラメータ化機能がない
  • 現在の一部のネットワークでは、伝送速度とサイクルタイムがパフォーマンスを制限している場合がある
  • 「古い」ノウハウを維持するためのメンテナンスとサポートの労力が増加
  • マルチベンダの構成とツールをサポートするためのインストール作業
  • 倉庫コストの増加と、潜在的な耐性年数終了シナリオによる可用性という課題

実際は、上のリストに記載されているフィールドバス規格のすべてが大きな影響を受けているわけではなく、例えばIO-Linkのように、まだ立ち上げ段階のものもあります。しかし、設備における旧式の技術の使用程度によって、求められる行動や市場からの圧力が業界ごとに異なることは明らかです。

 

ヒルシャーは、2021年頃からプロセス・オートメーション分野でSPEが早期に導入、展開されると予想しています。その理由は、設備の大半がHART、PROFIBUS PA、および同様のフィールドバスに基づいているものの、それらがデジタル・ビジネスモデルをサポートするのに必要な範囲にまで達していないためです。Namur Organisationと特にFieldCommグループは、PROFIBUS International(PI)およびODVAとともに、プロセス・オートメーション業界のAPLへの移行を強力に推進しています。これらの分野のアプリケーションでは、通常、パフォーマンスとサイクルタイムの要件が低く、ネットワークを介した診断とパラメータ化の展開は、ファクトリー・オートメーション・アプリケーションほどにはまだ進んでいません。他方で、ファクトリー・オートメーションへのSPEの展開にはもう少し時間が掛かるかもしれません。IO-Linkグループを含むPIやODVAなどの組織は、それぞれのアプリケーションにおける位置付けや利点を検討しながら、SPEの各規格への統合を評価する活動を開始しました。並行して、2つのグループが、設備用のさまざまなプラグ、コネクタ、およびケーブルを提案しようと活発に活動しています。これらすべての非常に生産的な取り組みと、それらが対処する多数の未解決の問題を考慮すると、ファクトリー・オートメーション分野への展開は2024年頃に始まると考えられます。

結論として、製造業において設備のステータス、診断、パラメータ化の点でまだ上位層に対して不透過の分野では、システム全体のパフォーマンスが不足しており、機械の稼働時間の増加、可用性、予知保全などのデジタル化の利点は実現しないと考えられます。したがって、プロセス業界では、できるだけ迅速に行動して前進しなければならないという圧力がさらに高まると予想されます。

 

シングル・ペア・イーサネットの概要

基本的な考え方は比較的シンプルで、潜在的な利点も非常に明白に見えるため、なぜもっと早くからシングル・ツイストペアに移行しなかったのかという疑問が浮かぶかもしれません。しかし、既存のイーサネット・ネットワークに対する変更は、ケーブル交換が意味するほど単純ではありません。さらに、各業界で期待される利益を実現するためには、多くの要件を追加する必要があります。

異なる物理層

現在の産業用イーサネット10Base-T/100Base-TXは、業界で最も多く展開、採用されている規格であり、2本のツイストペア・ケーブルを使用してデータを単方向に送受信します。したがって、シングル・ペア・イーサネットは同じツイストペアで送受信を行うため、異なる物理層と異なるカップリングおよびトランスデューサが必要になります。

 

SPEのさまざまな要件
長距離伝送

特に、産業用オートメーションで対象となるセンサ、アクチュエータ、およびその他の周辺フィールド・デバイスでは、それらの間に相当長いケーブル長が必要となります。そのため、現在の100Base-TXで利用可能な規定の100mに対し、ステーション間のケーブル距離を最大1000mまで延長することが強く求められるようになりました。

本質安全防爆

もう1つの側面は、プロセス・オートメーション分野からもたらされました。長距離の要件に加えて、防爆エリアや危険区域をサポートするために、本質的に安全な伝送が必要です。

電力伝送

実際のセンサ通信フィールドバスの多くでは、通信ケーブルを介した電力伝送が可能です。したがって、シングル・ツイストペア・ケーブルは、リモートセンサおよびアクチュエータに電力を供給するために必要な電力も伝送する必要があります。

アプリケーション固有の帯域幅需要

10Mbitの伝送速度で帯域幅需要に十分対応できるフィールドレベルのデバイスやセンサの次に、SPEをより広い帯域幅のアプリケーションにも展開することを考えました。そのため、IEEEは物理層を含むビジョン、モーション、またはHMIに適した規格も定義しています。

IEEE標準化および関連アプリケーション

これらすべての要件とインプットにより、次の表に示すように、伝送速度の異なる複数のSPE IEEE規格が策定されました。

IEEE規格PHY規格伝送速度ケーブル帯域幅ケーブル長用途
IEEE802.3 cg10Base-T1L10Mbit20MHz1000m
(STP)
センサ、アクチュエータおよび周辺機器、機械制御、電車およびバスネットワーク、ビルディング・オートメーション
10Base-T1S10Mbit20MHz15m(UTP)
25m(STP)
キャビネット設置(PoDLなし)半二重
APL10Mbit1000m
(STP)
本質安全および防爆装置
IEEE802.3 bw(BroadR Reach)100Mbit166MHz15m(UTP)
40m(STP)
自動車
IEEE802.3 bp1000Mbit600MHz15m(UTP)
40m(STP)
HMI、IPC、カメラ、モーションおよびロボット工学
IEEE802.3 ch2.5/5/10Gbit4-5GHz15m(STP)ビジョンセンシング、IPC、HMI、分析、医療システム
IEEE802.3 buPower over Dataline(SPE用PoDL、最大60Wの電力伝送)

さまざまなSPE関連規格の概要

「さまざまなSPE関連規格の概要」の表では、異なるセンサ、アクチュエータ、および周辺機器アプリケーションからの異なるニーズと需要を反映するために、10Mbitシングル・ペア・イーサネット規格IEEE 802.3cgを3つの定義に分割しています。10Base-T1Lでは、ポイント・ツー・ポイント接続で最大1000mのケーブル長が可能で、実際の設置に非常によく適合するため、センサの要件に最適です。

 

物理層の定義という点では、APLはT1Lとまったく同じですが、場合によっては防爆領域の本質安全防爆伝送用のコンポーネントが追加されます。10Base-T1Sでは、T1Lとは反対に、より短いケーブル長とPLCA(物理層衝突回避)と呼ばれる、異なるPHY層を使用したマルチドロップ設定が可能です。マルチドロップは、キャビネットの設置やその他の短距離用途に適しています。どちらのシステムにも、次の図と表に示すように、異なる物理層が必要です。

10Base-T1S

10Base-T1L

伝送速度12.5MBit7.5MBit
半二重マルチドロップ全二重
エコーキャンセル
ライン・コーディングDMEPAM-3
シグナル・コーディング4B5B4B3T
電圧1Vpp1Vpp(2.4Vpp)

 

PHY connection to upper layer host system

Although the physical layer differs to some details, that connection to the upper layers is the same. The IEEE has taken effort to make sure that any actual system with a MAC and an MII connection can interface to the actual new PHY so that the major change remains in only one OSI layer. The following picture shows the set-up:

System set-up of a point-to-point connection with power distribution

On top of this, the 802.3bu standard has defined a standardized transmission of power over the data line and it is capable to transmit up to 50W to the single endpoint. This feature allows backward compatibility to several existing sensor network standards that also power the connected sensor from a central power controller. The set-up in SPE is as follows:

システムには、ケーブルを介してエネルギーを供給するための電力供給装置(PSE)が必要です。指定された電源に接続されている3つの異なる電圧が定義されています。レシーバ側では、前例の場合、パワードデバイス(PD)は、ポイント・ツー・ポイントT1L接続で最大50W(48V)を供給できます。24Vでは、安定化PSEで最大10Wです。このシステムは、プロセス・オートメーション・ネットワークのトランクおよびスパー・トポロジと広く互換性があります。

シングル・ペア・イーサネットの標準化は、現状では産業用オートメーションの要求をサポートするのに適しています。物理層技術は自動車業界ですでにさまざまな用途で使用されているため、産業界のユーザーは実装を開始する際に、すでに現場で実証済みの物理技術に頼ることができます。ただし、特にファクトリー・オートメーション環境でSPEを実際のイーサネット規格に組み込むにはまだ時間がかかります。システム設置の観点からは、各センサにIPネットワークを導入することで、ベンダに依存しないツール環境で、現場のセンサを設定および管理できます。システム設置の観点からは、各センサにIPネットワークを導入することで、ベンダに依存しないツール環境で、現場のセンサを設定および管理できます。

 

関連リンク

SPEに関する詳細は、Niels Trappのホワイトペーパーをご覧ください!リンクをクリックしてダウンロード

 

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SPEに関するブログ・シリーズの第パート3 ファクトリー・オートメーション・ネットワークは、今日すでに大部分がイーサネット規格に基づいています。しかし、プロセス・オートメーション分野でのイーサネットの採用は、まだ進行中です。SPEはこれら2つの産業分野にどのような影響を与えるのでしょうか?

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