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セキュリティを備えた産業用通信

情報技術(IT)と運用技術(OT)の融合が進むのに伴い、製造環境ではITセキュリティへの要求が高まっています。VDE Verlagの編集長であるRonald Heinzeがヒルシャーの最高技術責任者(CTO)であるThomas Rauchにインタビューし、デジタル時代におけるセキュアな産業用通信インフラストラクチャの課題と解決策について意見を交わしました。

執筆者: Ronald Heinze
 

「従来はそれぞれ独立していたITとOTの世界が急速に融合しつつあります」とT. Rauchは強調します。効果的な生産プロセスを確保するには2つの分野がより密接に通信する必要があるため、この統合は不可欠です。今日、生産レベルからプライベートクラウドやパブリッククラウドまでが途切れることなく接続され、その中にはさまざまなデジタルサービスが含まれています。

その一方で、デジタル・トランスフォーメーションは新たなリスクももたらします。テクノロジーの進歩により、これまでは想像もできなかったような新しい攻撃ベクトルが生じています。この事態に対処するには、フィールド・デバイスのセキュリティ対策を絶えず最適化し、サプライチェーンのレジリエンスを強化する必要があります。相互接続性が高まり、さらなるデジタル化が求められるにつれて、潜在的なサイバー攻撃の範囲が広がっています。

T. Rauchによると、脅威の状況は、ハッカーによる単独の攻撃から、国家主導のサイバー作戦や貿易戦争が関与するグローバルなシナリオへと進化しています。「つまり、生産が意図的に中断されたり、停止に追い込まれたりする可能性があるのです」とCTOは主張します。このような事態は、生産システムに悪影響を及ぼすだけでなく、生産システムの機能的安全性に直接影響を与えることで命を危険にさらす深刻な脅威となります。ヒルシャーのマネージャによると、ドイツ連邦情報技術安全局(BSI)は、攻撃ベクトルの新しい脆弱性が毎日70件見つかっていると報告しています。

 

Thomas Rauch

グローバルなセキュリティ課題へのテクノロジーによる対応

「今日のテクノロジーの可能性はセキュリティ課題を新たな次元に導きます」とT. Rauchは強調します。「たとえば、量子コンピューティングを使えば、私たちが現在頼りにしている複雑なセキュリティメカニズムさえも破ることができるでしょう。」人工知能も一役買っています。「最近成立したサイバー・レジリエンス法(CRA)などのEUの新しい規制は、集中的にリソースを割いてこの問題に対処すること、それをサプライチェーン全体で実施することを企業に求めています」とマネージャは言い添えます。問題は、パニックになることなくこうした課題に対処するにはどうすればよいかです。

企業がこうした複雑な課題に対応するには、ポスト量子暗号の発達をも考慮した先進のテクノロジーソリューションを採用し、激化し続ける新たな脅威との競争において常に優位に立つことを目指さなければなりません。

ヒルシャーはこの取り組みの最前線に立っています。「当社は、産業用通信のエキスパートとして、社内に培った専門知識を活用しています。」同社に入社して2年になるT. Rauchはこう語ります。「ワンストップ・ショッピング」という概念のもと、ドイツのハッタースハイムに本社を置くヒルシャーは、新たな攻撃ベクトルからの保護専用に設計されたソフトウェアとハードウェアのソリューションを連携させ、組み合わせて提供しています。「これにより、新たな課題のすべてに包括的に対応することができます」とCTOは付け加えます。彼は、フランクフルト近くのハッタースハイムにあるヒルシャー本社と、ベルリンとブルガリアのヴァルナにある開発拠点で、netXチップ、プロトコル・スタック、産業用IoTの技術開発を率いています。「当社には新たな攻撃ベクトルに対抗する秘訣があります。」彼は続けます。「将来、ソフトウェアだけを使って高度なセキュリティを確保するのは不可能になるでしょう。」

「当社のソリューションには、オープン・ソース・コミュニティと、当社がメンバーとして活動しているリアルタイム・イーサネットとフィールドバスの組織が持つ専門知識が組み込まれています。こうした組織に直接関わることで、新たに生じる要件を完全に理解することも可能になっています」とRauchは続けます。彼は、ODVAのCIP Securityや、PROFIBUS & PROFINET InternationalのPROFINET Security、OPC UAセキュリティを例に挙げています。通信ソリューションの導入場所も重要であり、セキュリティのライフサイクル全体を考慮する必要があります。

現行の要件と将来の要件を満たす

「業界ですでに使用され、確固たる地位を築いているnetX 90チップ世代は、現行のセキュリティ要件をすべて満たします」とCTOは断言します。「先進のセキュリティメカニズムがチップに統合されているのです。」このネットワーク・プロセッサは、IEC 62443とサイバー・レジリエンス法のセキュリティ規格を満たすように特別に設計されており、産業用IoTにおける通信をセキュアに行うための強固な基盤となります。

「たとえば、当社のnetX 90はセキュアブートメカニズムを備えています。アプリケーション側でファームウェアに署名できるため、悪意のあるソフトウェアをロードすることは不可能です」と42歳のマネージャは説明します。セキュリティの問題は、あらゆる製品領域でますます重要になっています。ヒルシャーは、さまざまな通信プロトコル向けの新しいセキュリティメカニズムも含めて、将来のセキュリティ規格をすべて満たすことを目指しています。

ヒルシャーは、新しいnetX 900世代でさらに一歩前進しています。このセキュアなギガビット通信プロセッサは、さまざまなレベルのセキュリティメカニズムを統合すると同時に、低い消費電力で高いパフォーマンスを提供します。セキュリティ管理処理には、セキュアデバッグ、一意のID、キー管理、証明書管理、ライフサイクル管理、暗号エンジンなどの機能が含まれています。 

「セキュリティ・オンザフライはデータパスにも統合されていますが、この統合はデータ転送速度を低下させることなく効果的に行われています」とT. Rauchは言います。「netX 900は、暗号エンジンを備えた独自のセキュリティプロセッサを特長としています。」彼が強調するのは、この新世代の通信コントローラが、高度に最適化されたハードウェアとソフトウェアを連携させて組み合わせたものであることです。

「当社はさらに、スタックのセキュアブートメカニズムをすべて統合しました」と彼は主張します。「当社が通信コントローラを開発する際には、あらゆる要件を細部まで検討します。攻撃ベクトルはすでにROMコードに埋め込み可能です。」彼は続けます。「包括的な通信エキスパートとして、当社はすべてをコントロールしており、最も効果的なレベルで脆弱性に対処することができます。」このような統合されたテクノロジーは、現行の規格に従ってセキュリティを強化し、IEC 62443の要件を満たすだけでなく、デコミッション中のセキュアなデータ破棄も考慮しています。ユーザ組織のセキュリティ規格も統合されています。

セキュアブート機能やファームウェア署名機能を備えたnetX 900のようなセキュア通信コントローラを開発することは、産業用通信デバイスを不正アクセスから保護する上での重要な一歩です。netX 900ファミリの最初のサンプルはSPS 2024で提供されます。ヒルシャーは、レジリエントなサプライチェーンも重要視しています。「当社が使用する22ナノメートル技術搭載の半導体チップは、TSMCから調達しています。このチップは間もなくドレスデンと日本で製造される予定です。これにより、サプライチェーンの長期的なセキュリティが確保されます。」

A tray of embedded modules with a netX chip onboard in a production machine. A red gleam is seen in the background. A small golden needle for testing comes from the top pointing at the tray.

規制要件と市場の変化

増大するリスクを受けて、規制要件は不可欠なものとなっています。最近成立した欧州連合のサイバー・レジリエンス法(CRA)は、3年の猶予期間の後に発効しますが、製造業者によるセキュリティインシデントの報告義務といった一部の条項は、それよりもずっと早く施行されます。CRAはCEラベルの取得に必要な条件となります。影響を受ける製品の販売業者は、CRAの要件を満たすことを求められます。

CRAと関連する規制要件(セキュリティパッチを少なくとも5年間提供する義務など)の採用は、グローバル市場に多大な影響を与えます。報告義務には、関係当局に24時間以内に問題を通知することも含まれます。こうした義務を果たさなかった場合の罰則は、一般データ保護規則(GDPR)に違反した場合の罰則と同程度です。T. Rauchは、産業用通信に対する高度な要件はポートフォリオと市場の統合につながると確信しています。

「産業用通信のイネーブラーであるヒルシャーなら、こうした高度なセキュリティ要件を満たすことができます」とT. Rauchは自信を持って断言します。これは、通信コントローラから、netFIELDのエッジ・コンピューティング・ソリューションやエッジ管理ソリューションを使用したIoTにいたるまで、ヒルシャーのポートフォリオ全体に当てはまります。「IoT業界では大きな変化も起こっています。半開発のLinuxアプリケーションの製造業者や自社で構築したソリューションの運用業者がCRAの基準を満たさなければならなくなるのがその理由です。」彼の意見では、多くのプロバイダにとって、増大を続けるITセキュリティ要件を自社ソリューションが継続的に満たせるようにすることは経済的に不可能です。多大なリソースの割り当てと多額の投資が必要になるためです。

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CRA準拠へのロードマップ

「当社では、こうした規制は難しい問題であると同時に、セキュリティの先駆者としての地位を確立するチャンスでもあると考えています」とマネージャは嬉しそうに語ります。「私たちはお客様が直面しているリスクを理解しており、適切に対応することができます。」ヒルシャーでは、こうした規格にいち早く適合し、セキュリティエキスパートの専任チームを作ることで、顧客が複雑な認証プロセスを無事に終えられるよう導き、包括的なセキュリティポートフォリオを提供することも可能になっています。これには、プロセス側と製品側の両方でIEC 62443のセキュリティ規格を確立することが含まれます。NIS 2指令も影響を受けます。ヒルシャーは必要な専門知識を有しています。

ヒルシャーには、CRAの施行に間に合うように、TÜV Rheinlandからプロセスと製品のIEC 62443認証を受けるという明確なプランがあります。プロセスの一定の成熟度について定められたMaturity Level 2から始める予定です。一定の成熟度を達成するには、製品を開発または統合する際に、プロセス関連のすべての要件を常に遵守する必要があります。「SPS 2024までにはプロセスの認証について最終的な報告ができる見込みです」とT. Rauchは説明します。

システムの技術要件(IEC 62443-3-3)と製品の技術要件(IEC 62443-4-2)は、規格に従って4つのセキュリティレベル(SL)で評価されます。異なるレベルは、さまざまな攻撃者クラスに対するレジリエンスのレベルを示しています。「それに合わせて当社の製品を分類する予定です」と彼は続けます。「その後、製品の認証が始まり、2つの段階を踏んでSPS 2026までに完了します。」この通信専門企業は、成功を確実なものとするため、プロのコンサルティング会社も利用しています。

もう1つの課題は、現行のNIS 2指令です。NISの目的は、攻撃者を寄せつけず、セキュリティインシデントに備えることです。NIS 2では新たに適用範囲が拡大されました。本指令では、サイバーセキュリティが多くの中規模企業にまで拡大されています。NIS 2の期限は2024年10月18日です。「NIS 2には、ISO 27001規格に準拠した情報セキュリティで十分に対応できます」とT. Rauchは述べています。「IEC 62443とISO 27001の両方の規格を適用することをお勧めします。当社はISO 27001認証にも取り組んでおり、2025年までの完了を目指しています。」

結論

産業用通信では、物理レベルとデジタルレベルの両方をカバーする総合的なセキュリティ戦略が不可欠です。工業生産におけるデジタル化と相互接続がますます進む中で、そうした戦略を遂行するためには、ITとOTの密接な連携、堅牢なセキュリティソリューションの開発、変化する規制要件への積極的な適合が求められます。産業用通信における統合的な手法と広範な専門知識を有するヒルシャーは、最新の製造環境のセキュリティ要件を理解するだけでなく、能動的に形成することもできる、ただ一つの企業です。

この文章は、etz elektrotechnik & automationに最初に発表されたものです。

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執筆者について: Ronald Heinze

Ronald Heinzeは、オートメーション業界で顔の広い情報通の優れた編集者の1人として知られています。彼は、VDE VERLAG社(デジタル・ファクトリー・ジャーナルなどの業界誌を発行するドイツのメディア会社)の出版事業ディレクター兼編集長です。

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